治せる難聴・滲出性中耳炎・耳掃除のお話

滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)とは、どんな病気ですか?

この記事はルナメディカル新聞社発行の情報紙『るなネット』に掲載された記事を再編集したものです。
耳・喉

子どもと年配の方に多い病気です。一言で言いますと中耳腔(ちゅうじくう)-つまり鼓膜の内側の空間のこと-に水がたまる病気です(挿絵参照)

まず中耳のしくみを理解してください。中耳は太鼓のようなもので鼓膜は太鼓の革です。
中耳と鼻は空気抜きのトンネル(耳管)でつながっていて、そのトンネルの出口は鼻の中(奥の方)にあります。中耳の中からはもともと少しずつ水が(これはきれいな体液です)でてきて、トンネルを通って鼻の中に排出(排水)されるようにできています。これが何らかの理由で排出されなくなって中耳腔に水が溜まった状態が滲出性中耳炎です。これがひどくなりますと聴力に障害が出てきます。患者さんの自覚症状としては「耳がつまった感じ」とおっしゃる場合が多いですが、幼児では自分では何も言わないことも多いので注意が必要です。
中耳腔に水が溜まると、ちょうど太鼓の中に水が溜まった様な状態になり、当然太鼓は響きません。
だから聴力に障害が出ます。この病気の原因は次のとおりです。
【1】急性中耳炎になった後、中耳腔と耳管の内側がただれた状態になっている場合で、子どもが急性中耳炎になった後、親の自己判断で途中で治療を中止してしまいますと滲出性中耳炎になり結局、急性中耳炎を繰り返したり、聴力に障害が出ることになります。
【2】トンネルの出口あたり(鼻の奥)にアデノイドという扁桃腺の様な物が腫れていて、トンネルの出口を塞いでいる場合で、これも幼児に多い原因です。
【3】アレルギー性鼻炎、蓄膿症、あるいはひどい鼻かぜの為に鼻の中がぬるぬるした鼻水で 満たされ、トンネルの出口を塞いでいる場合です。現在では二人に一人の子どもは、程度の差はあれアレルギー性鼻炎であることを考えますと、やはり子どもに多い原因と言えます。
【4】トンネル(耳管)の働き自体が弱くなっている場合で、これは年配の方に多い原因です。耳が遠くなってきても「どうせ年だから」とあきらめていませんか?

難聴でもこれは治るタイプの難聴です。滲出性中耳炎の治療は、時間は少々かかりますが根気良く治療することが大切です。

治る難聴と治らない(治りにくい)難聴

この記事はルナメディカル新聞社発行の情報紙『るなネット』に掲載された記事を再編集したものです。
耳・喉

耳は大きく分けて2つの部品により構成されており難聴にも次のとおり2種類あります(挿絵参照)。

【1】中耳は太鼓のようなもので鼓膜は太鼓の革です。鼓膜でとらえた小さな音を太鼓で増幅して内耳に伝えます。これが原因で起こるのを「伝音性難聴」と言い、治る難聴です。
【2】内耳は神経そのもので、中耳で増幅された音が蝸牛(カタツムリの形に似る)に入り、さらに聞こえの神経を通って脳に伝えられ、初めて音として聞こえるのです。これが原因で起こるのを「感音性難聴」と言い、治りにくいのが現状です。 伝音性難聴と感音性難聴はしばしば同時に起こり、「混合性難聴」と呼ばれます。例えば50歳以降、ある程度年齢がいってきますと次第に聞こえにくくなってきます。このとき多くの場合は、二つの難聴を合併した「混合性難聴」です。
神経が弱ってきた部分は治りにくいですが、音を伝える部分は治ります。
中耳と鼻は空気抜きのトンネル(耳管)でつながっていて、そのトンネルの出口は鼻の中(奥の方)にあります。中耳の中からはもともと少しずつ水が出てきて(これはきれいな体液です)、トンネルを通って鼻の中に排出(排水)されるようにできています。
これがなんらかの理由で排出されなくなって中耳腔に水が溜まった状態が“滲出性(しんしゅつせい)中耳炎”です。また、溜まっていなくても耳管の調子が悪くなり、鼓膜の動きが悪くなっている状態を“耳管狭窄症”と言います。中耳腔に水が溜まると、ちょうど太鼓の中に水が溜まった様な状態になり、当然太鼓は響きません。だから聞こえに障害が出るのです。 治療は通気治療と言い、大人なら鉄の管で耳管に空気を通して広げて乾かします。子どもでは「ラッパ」と発音させ(このときトンネルの出口が広がる性質がある)、空気を送り込みます。

いずれにせよ治るまで時間がかかり、根気が必要です。 
大人でも一度“滲出性中耳炎”になると、放置しておくと年をとってきたとき、人より早く耳が遠くなります。 また年配の方で、耳が遠くなってきても「どうせ年だから」とあきらめていませんか?
難聴でもこれは治るタイプの難聴ですので、耳鼻咽喉科専門医に相談してみるとよいと思います。

耳掃除もやりすぎは禁物(外耳道炎について)

この記事はルナメディカル新聞社発行の情報紙『るなネット』に掲載された記事を再編集したものです。
耳・喉

誰しも時々は耳掃除をしないと耳垢が溜まります。
その時に、昔からよく使われるのが、いわゆる「耳掻き」です。しかし、耳掻きを使って耳掃除をり過ぎると思わぬトラブル、つまり外耳道炎が起こることがあるので注意が必要です。

耳掻きは硬いので、耳の穴(外耳道)に引っかき傷をつけてしまいます。引っかき傷ができると、外耳道の皮膚からお汁(浸出液)も出できてジクジク(湿疹)になります。外耳道はもともと敏感なところなので、ムズムズ感じやすく、ますます痒くなります。痒くなると、掻きたくなるのが人情です。ここで再び「耳掻き」の登場です。これでゴリゴリやるとまた気持ちがいいんです、実際!

もう、お解かりですネ。これは、痒いから触る。触るとジクジクがひどくなるので、痒くてたまらず、また触ってしまう、の繰り返し。悪循環なのです。
耳が痒いと言ってくる人。ばい菌まで入ってしまって、膿んで耳が痛いと言ってくる人。それで、耳から膿が出ている人。膿と耳垢がいっしょに外耳道に詰まってしまって、耳が詰まると言ってくる人。いろいろいらっしゃいます。ひどくなると、耳の入り口の周りまでただれたり、鼓膜も炎症のため破れたりする事もあります。
治療は単純です。外耳道をきれいにして、消毒して、リンデロン軟膏を塗るだけです。ばい菌で化膿していたら抗生物質を併用します。自宅でリンデロン液を外耳道に入れてもらうようにしています。また、痒いと触りたくなるので、痒み止めの抗ヒスタミン剤を飲んでいただきます。
実は私も大学生の時、耳掃除が大好きで、毎日していて、ひどい外耳道炎になりました。その時、診て頂いた耳鼻科の先生が、「耳掻きは、ばい菌がいっぱいくっ付いているので(使い捨てではないので当たり前)、硬いへらで外耳道を傷つけて、ばい菌を傷にこすり付けている様なもんやで!」とおっしゃいました。①耳掻きを捨てる。②耳掃除は綿棒でする。③耳掃除は一週間に一回以上はしない。これはその時の先生のご指導でした。

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